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スティーブ・シャピロは、1960-70年代のアメリカ社会を突き動かした重要な出来事を写真に収めたアメリカ人の写真家である。彼はまた « ゴッドファーザー» や « タクシードライバー » 等の伝説的映画のスチル写真でもその名を知られている。
・スティーブ・シャピロのバイオグラフィー
スティーブ・シャピロは1934年にブルックリンで生まれ、9才にして写真に対して強い関心を示した。若くして彼はフォトジャーナリスムの道へと進むことを決心する。彼に影響を与えた人物として、このジャンルの先駆者と言われるフランス人の有名な写真家アンリ・カルティエ・ブレッソンの名が挙げられるのは、そのためである。
スティーブ・シャピロは、アメリカのフォトジャーナリスムの権威として大きな影響力をもつ人物、ウィリアム・ユージン・スミスの下で教えを受ける。スミスは彼に写真技術を教えるだけでなく、社会や写真に対する視線を養うように説いた。シャピロのその後の活動にウィリアム・ユージン・スミスの影響があることは明白である。
1961年シャピロはフリーランスのフォトジャーナリストとしてキャリアを開始する。彼の写真は、ライフ、ヴァニティ・フェア、スポーツ・イラストレイテッド、ニューズウィーク、タイム、パリ・マッチ等の世界的に有名な雑誌に掲載される。
1960年代アメリカの政治・文化・社会的な大転換は、シャピロの活動にとりわけ多彩で興味深い環境をもたらした。かくしてシャピロはロバート・ケネディの大統領選挙戦や、公民権運動の重要事件(ワシントン大行進、セルマからモンゴメリーへのデモ行進)をカバーする。アメリカ現代史の節目となる時期にあって、シャピロはフォトジャーナリストとして、記録映画監督として、また真の活動家としての自分の存在を確立する。これはアーカンソー州の移民労働者を扱ったルポルタージュ(1961年に制作)にも言えることで、ここでシャピロは移民労働者の非常に困難で不安定な日常を告発している。
1970年代、スティーブ・シャピロは後に伝説となる名作映画の撮影現場で、その才能を発揮する機会に恵まれる。彼は「真夜中のカーボーイ」(1968)の撮影現場で何点かの衝撃的な写真を撮影する(その中にはダスティン・ホフマンの有名な写真も含まれている)。その後、当時目覚ましい発展を遂げていた新生ハリウッド映画界の重要人物フランシス・フォード・コッポラの映画「ゴッドファーザー」の専属フォトグラファーとして、1971年にパラマウント映画と契約する。この映画は、マーロン・ブランド、アル・パチーノ、ジェイムス・カーン、ロバート・デュバルなど堂々たるキャスティングで、シャピロは今も言い伝えられる「ささやき」のシーンやマーロン・ブランドが猫を抱くシーン等の忘れがたい瞬間を貴重な写真に収めた。
次いでシャピロは、フィルム・ノワールに捧げるロマン・ポランスキーの記念すべき讃歌である「チャイナ・タウン」(1974)の撮影にスチルカメラマンとして立ち会う。2年後には、ロバート・デ・ニーロの要請により、1970年代アメリカ映画を象徴する映画の1つであるマーティン・スコセッシ監督「タクシードライバー」のスチルカメラマンとなる。この映画はカンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞した。
スティーブ・シャピロはアメリカ現代史の重要な瞬間を写真にとらえ、また、真に社会的・人道的な問題意識を提起したことから、彼は異論の余地なくフォトジャーナリスムの巨匠といえる。
・スタイル
スティーブ・シャピロのスタイルは、様々なテーマにおいて相手の気持ちを汲んだ人間的な視点が特徴である。彼の写真はヒューマニズムに裏打ちされ、時代の社会的、政治的、文化的問題に深く関わった人間の写真である。
彼の写真へのアプローチは、恩師であるウィリアム・ユージン・スミスの系譜を直接引いている。
・ビブリオグラフィー
Taxi Driver, Taschen, 2010
The Godfather Family Album, Taschen, 2008
Schapiro’s Heroes, PowerHouse Books (2007)
Steve Schapiro: American Edge, Arena Editions (2000)